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名古屋地方裁判所 昭和37年(ワ)1898号・昭39年(ワ)3111号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕第一、本件事故発生に対する判断

原告ら主張の日時場所において、被告山森商店に勤務する自動車運転手安藤貞治が加害車を運転していた際、原告ら主張の如き理由によつて本件事故を惹起し、ために、足立広幸(昭和三二年一月二一日生)が死亡し、原告足立喜美がその主張の如き傷害を受け、かつ、原告西川鉄男(昭和三〇年一一月二日生)もその主張の如き傷害を負つた事実は、被告山森商店同被告名阪運輸において、いずれもこれを認めるところである。(被告愛知いすずは右の点を争つているが、同被告に対する原告西川ら三名の請求の理由なきこと後叙のとおりであるから、この点の判断は省略する)

第二、責任主体に対する判断

一、原告らは、被告山森商店、同名阪運輸はいずれも自賠法第三条に所謂加害車の運行供用者である旨主張するところ、被告山森商店は、右事実を自白しているから、以下においては、被告名阪運輸の責任について検討する。

<証拠>を綜合すると、

(一) 被告山森商店は、製紙原料の販売等を業とする会社で貨物自動車数台を所有していたところ、その業績に比し所有する貨物自動車が過剰になつてきたため、昭和三六年一〇月頃、予ねてから仕事を手伝つていた被告名阪運輸に対し、加害車を含めて合計三台の自動車を買い取つてくれるよう依頼したこと

(二) 被告名阪運輸は、貨物運送を目的とする「一般区域貨物自動車運送事業者」であるが、その営業車として前記自動車三台を買い受ける意向で、被告山森商店の右申込を承諾したが、当時、右自動車はいずれも被告山森商店において被告愛知いすずから所有権留保付で購入し、自家用に使用していたところ、同年一二月分以降の割賦金が未支払であつたため、昭和三七年一月頃、被告山森商店及び被告名阪運輸は、被告愛知いすずに対し、右売買の話を申し出で、加害車の使用名義を被告山森商店から被告名阪運輸に変更方、及び割賦代金の支払を爾後被告名阪運輸においてなすべきことを依頼したこと

(三) そこで、被告愛知いすずは検討の結果右申入を承諾したが、自家用車を営業車として使用名義を変更するためには、その所有名義を営業者名義に登録替えする必要があつたので、加害車の所有名義を被告愛知いすずから被告名阪運輸に移転し、その代り、割賦残金の支払を確保するため、加害車に抵当権を設定することとなつた。そして、被告名阪運輸は、右登録名義の変更手続、その他被告名阪運輸の加害車等の購入による増車手続一切を、被告愛知いすずに対し依頼したこと

(四) 被告愛知いすずは、被告名阪運輸と協議の上、その指示により、昭和三七年一月三一日被告名阪運輸名義で愛知県知事に対し道路運送法第一八条に基く事業計画変更届をなし(実質は加害車等の増車による代替申請)、同年二月二日、被告愛知いすずから被告名阪運輸宛加害車の移転登録をなし、かつ、その登録番号を愛一せ六七二〇号から愛一あ八九二五号と変更手続を了したこと

(五) かくして、愛知陸運事務所における加害車の移転登録の事務はすべて完了し、被告名阪運輸において何時でも運行の用に供し得る状態となつたが、ただ、それまで使用していた自家用車としてのナンバープレイト(白ナスバー)を営業車用のもの(黄ナンバー)に付け替える手続(右手続は名古屋市昭和区八事所在の八事車検場においてなされる)が未了であつたので、被告愛知いすずの係員は、その旨被告山森商店らに連絡した。そこで、同被告及び名阪運輸は、加害車ほか一台の自動車の車体に、「名阪運輸」の名称を大書したうえ、右車検場へ赴かせるべく、被告山森商店の従業員安藤貞治(無免許)ほか一名に命じて、加害車と他の一台の自動車の運転をさせたところ、その運行の途中において、加害車が本件事故を惹起したこと

(六) これより前、同年一月下旬頃、右売買の目的たる自動車三台のうちの他の一台が、折からの北陸豪雪のため帰名し得なくなつた際、被告山森商店は被告名阪運輸に対し、右自動車の引渡方の延期を求めたところ、被告名阪運輸は、陸運局の増車許可については期間の定めがあるとして、如何なる手段を構じてでも早急にこれを立ち帰らせるよう強硬に要求したため、被告山森商店は止むなくその指示にしたがい、被告愛知いすずからチエインを借り受けて、前記期限に間に合わせた事件もあつたこと

をそれぞれ認定し得べく、前記各証人及び各本人の供述中、右認定に反する部分はにわかに措信し難く、他にこれを左右するに足る証拠はない。

以上認定事実に基いて考察するに、本件事故の前日までは、加害車の保有者は被告山森商店であつたことは明白であり、かつ、本件事故時においても、同被告は未だ右保有者の地位を全面的に喪失していたとはいい難いところであるが、当裁判所の見解によれば、被告名阪運輸も亦、本件事故時において加害車の運行供用者であつたものと判断する。けだし、(一)同被告は、当時すでに加害者の登録名義を取得していたうえ、運転手安藤のなした本件加害車の運転は、専ら被告名阪運輸所属の営業車としてのナンバープレートの付け替えのためであり、その運行利益は、むしろ被告名阪運輸に帰属するものと認められること、(二)同被告は、加害車の買主として、前記各種の手続完了以前から相当程度加害車の使用につき介入し、これを規制していたのであり、加害車の右運行は、被告名阪運輸の意思と無関係になされたとは考えられないこと、(三)同被告は、加害車を営業車として買い受ける意図であつたため、同被告の加害車に対する密着度は、自家用車のそれと対比すると、格段に強度であつたこと、等の事実に徴するとき、同被告は、被告山森商店にも増して、加害車に対する運行支配及び利益を享受していたものと認めるを相当とするからである。尤も、本件においては、被告名阪運輸主張の如く、同被告と被告山森商店との間には当時未だ明確には加害車の売買代金の定めはなく、ナンバプレートを前叙の如く営業車のそれに変更した後双方協議のうえ決定する約定であつたこと、及び、被告名阪運輸は未だ一度も加害車を現実に運転した事実のないことが明白である。しかしながら、以上の如き事実が存するからといつて、加害車の前記運行につき、被告名阪運輸の有した支配と利益関係には、さしたる消長なきものと解するので、この点を云為する同被告の見解はとうてい容認することを得ない。

叙上説示の次第であつて、被告名阪運輸も亦、被告山森商店とともに、本件事故により原告らに生じた損害を賠償すべき義務ありといわねばならない。

二、次に第三一一一号原告らは、被告愛知いすずも加害車の保有者である旨主張するが、その理由のないことは、前段に説示した事実関係に照し明瞭であるから、特に説明しない。 (山口正夫 可知鴻平 寺本栄一)

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